Special thanks;史成さん(@W_4MtcA)
最近のピナレロはフル内装でハンドル周りの自由度があまり良くなく、好きなハンドルを使うのに制約が大きいのでカーボンパーツやチタンの陽極酸化処理に詳しい知り合いの方にお願いしてCNCでワンオフのアルミスペーサーを作って頂きました。
最近、DOGMAの内装用の専用ハンドルが品薄で納期が長いらしいですし、このスペーサーを使うと社外ステムでも組めるのでポジションやハンドルの調整の自由度も段違いによくなるので、内装のピナレロを使ってるユーザーの方はいかがでしょうか?
【経緯】
制作していただいた経緯だが、フル内装のDOGMAで自分のお気に入りのハンドルとステムで自由なポジション調整で、ヘッド周りの音鳴りもなく快適に使いたいと考え色々な方法を検討して、実際に試してみたパーツもあるが、どうやっても実現できそうになかったのでワンオフで思い通りのパーツを制作して頂くしかないと
【検討した外装方法】
①純正のノーマルステムアダプタ
②dogma F12向けのdeda dcrヘッドパーツの流用
【純正のノーマルステムアダプタの欠点】
・分厚い(20mmあり、ハンドルを全然下げられない)
・社外ステムで組んでいる人もいるようだが、一応、純正のエアロステムで使う前提らしい
・2019年当時のまだリムブレーキをメインで売っていた時代を反映していて、機械式変速やリムブレーキでも組めるように、ワイヤーのカーブが緩くなるように設計されており、厚さが20mmもある
・今のデュラエースは油圧ホース2本だけなので、通すものに対して穴が大きいので雨天走行時に雨水が入ってくることが考えられる。
【dedaのヘッドパーツの欠点】
※この組み付け方はdedaのピナレロ用ヘッドパーツの本来意図してない使い方をしているので、alaneraなどdedaのハンドルと合わせて使った場合はそうとも限らないと考えられる。deda alanera dcrなど、それぞれのヘッドパーツに対応した専用のハンドルバーを使った場合の性能や品質までを否定する意図がないことを強調しておきたい。
2021年からヨーロッパの方では流通していたみたいだが、2022年から日本でも取り扱いが始まり、dedaのalanera dcrやVINCIを使用してフル内装することができるようになった。形状的に、自分の望んでいるコラムの前側からホースを入れる組み方に使えそうだったので注文しておいて、最初組んだ時はこれを使用した。
https://cyclepine.com/blog/part_accessories/34265.html
この組付けでは、コンプレッションリングがC型のせいか、玉押しが樹脂製のせいなのか、ステムとの接触面も前側が欠けているからか、コラムがパキパキ鳴るのであまり良い組み合わせとは言えない状態だった。
配線自体は結構綺麗だったが、ヘッドの音鳴りという致命的な欠点を抱えていたので長期的にこの状態で使い続けるには不安があった。
【仕様】
最近のピナレロ製のバイクはディスクブレーキが主流で、今後のコンポ事情を考えるとワイヤレスの電動変速が主流になることを考えて、油圧・ワイヤレス変速専用に設計して頂いた。
なので、R9200、R8100、SRAM REDなどのハンドルからフレームにエレクトリックケーブルが入っていかないコンポを使う前提となっている。R9100デュラエースなどエレクトリックケーブルを使うコンポでも、エレクトリックケーブルくらいならドリルで穴を追加すれば使うことは可能だろう。
あとは、オリジナルヘッドパーツの上側のコラムスペーサーはシマノプロVibeステム専用のエアロスペーサーに最適化してもらっており、スペーサーに合うように突起が付いている。
【対応コンポ】
・加工なしで使用可能→無線の電動(12s Di2、etap)、電動変速のリムブレーキ(12/11s Di2、etapなど)
このオリジナルヘッドパーツは油圧・無線コンポに合わせて設計してもらったので、もちろん対応。
コネクタが太いEPSは現物がないので未確認です。
当初想定していなかったが、実際にブレーキケーブルを通してみると結構緩いカーブを描いていることから、リムブレーキの引きも純正ハンドルに比べて悪くないと考えられ、リムブレーキでも使えそうだ。
写真は右後の配線をイメージして試しに通してみたが、リアブレーキのレバーと反対側の穴からフレームにワイヤーを入れればかなり緩く曲げることができる。
・多少加工すれば使用可能→11s(ケーブルあり・電動変速)の油圧ディスクブレーキ
油圧ホース(あるいはリムブレーキのアウターorDi2ケーブル)の合計2本を左右から通す構造となっているので、9100系の油圧・電動など、油圧2本,Di2ケーブル1本の合計3本を通すのはそのままの状態では不可能だが、Di2ケーブルを通す穴をドリルで開ければ9100系デュラエースなどにも対応させることができる。
【形状・材質】
材質はヘッドの与圧をきちんと行える剛性を確保したかったので、アルミニウムで制作してもらった。
端的に言えば、ピナレロ純正の分割式ヘッドスペーサーと同じ断面形状をしたアルミ板だ。
ピナレロの内装用の分割式コラムスペーサーと同じ形をしていて、回転を防止する突起の受けとなる凹みもスペーサーの裏側にあるので完全に純正コラムスペーサーの代わりに積むことができるようになっており、コラムスペーサーと同様に純正の玉押しの上に積むことができるようになっている。
↓純正コラムスペーサー
コラム後ろ側の2つの突起はシマノプロのVibeステム専用のエアロスペーサーの穴に嵌るようにできている。(シマノプロ以外のスペーサー使用時やベタ付けで使用する時にこの突起と干渉するので、突起なしでの制作も可能とのこと)
【組み付け例】
組付け:Cycle House Ishida様
【干渉】
シマノプロの10°のステムをベタ付けする場合を想定してコラムスペーサーと重ねてみるとスペーサーの前側とステムの裏が接触するので、シマノプロのVibeの10°アルミステムでは最低でも3mmのコラムスペーサーをステムとオリジナルスペーサーの間に入れて使う必要がある。
10°のステムでも干渉するので、17°のステムをベタ付けするのは難しいかもしれない。
【現在確認済みの互換性】
[前提知識]
このオリジナルヘッドパーツはシマノプロのVibeステム専用スペーサーをスペーサーとして使う前提で設計されているが、個人的にはこのコラムスペーサーは非常に良くできていると思っている。
・利点
1,1-1/8コラムに対応したコラムスペーサーでエアロ形状をしている
2,汎用品のコラムスペーサーと同様に扱うことができる
3,コラムスペーサー同士がちゃんと揃うように突起がある(この突起は小さく、真ん中にあるので大半のステムとは干渉しない)
本来は軽量化のために開けられた穴だが、オリジナルヘッドパーツではこの穴を利用して回転を防ぐために突起が設けられている。
・シマノプロVibeステム1-1/8、10°、90mm
ベタ付けだとコラムスペーサー用の突起とステム自体が干渉するし、突起が無かったとしてもスペーサーの前側とステム裏が接触するので、少なくとも2mmのコラムスペーサー(Vibe専用スペーサーなら3mm)を入れる必要がある。
突起が邪魔でベタ付けを想定した干渉のチェックができなかったので、オリジナルスペーサーの裏側とステムを合わせてみた。(もちろん、裏表逆の状態では玉押しと噛み合わないので走らせることはできない)
ベタ付けはこの形状の場合はオリジナルスペーサーの前側とステムの裏が接触するので不可能だ。
・Deda zero 1 6°(?)、90mm
最も一般的な形状、角度のステムだと思うが、6°のステムなら干渉は大丈夫そう。
6°のステムには軽量なモデルが多いので、軽量化目的で社外ステムを使うにはこのタイプのステムを使う人が多いと思う。
ただし、シマノプロ製のスペーサー用の突起と干渉するので突起ありの仕様ではベタ付けは不可能。突起なしの状態ならベタ付け可能。
・S-WORKS Venge stem 6°、100mm
剛性が高いことに定評があるVenge stemでは、他のステム同様突起のためにベタ付けは不可能だった。
また、Venge stemはステムの幅が広く、ベタ付けするとホースの通り道を塞いでしまうので、少なくとも3mmのVibe用スペーサーを入れる必要があると考えられる。
Venge stemやTarmac stemには12°のバージョンも存在するが、12°のステムは手持ちで所有していなかったので互換性の確認はできなかった。
・MOST Tiger AL Aero、8°、90mm
ピナレロのパーツブランドのMOSTが製造するエアロステムで、DOGMA F8,F10,GAN,Prince,Parisなどの内装じゃないタイプのピナレロ製バイクの標準ステムだ。現行モデルでも採用されているモデルがあり、純正のTiCRのノーマルステムアダプタの推奨(?)ステムなので現在も入手可能なステムだ。
現在、コロナや物流などの様々な事情で自転車業界は慢性的な品薄を起こしているが、このステムはDOGMA F8の頃から採用されており、メルカリやヤフオクでたくさん中古品が流れていることから比較的入手性が良い。
これまで、Vibeステム専用スペーサーの突起が理由でベタ付け不可だったが、なんとMOST Tiger AL Aeroは奇跡的に突起といい感じに干渉しなかったのと、8°という微妙なステム角度でオリジナルヘッドパーツとの接触もなかったので今回テストしたステムの中では一番低くセッティングできると考えられる。
他のステムでは突起なしの仕様のほうが良いが、このステムに関してはズレ予防のために突起アリの仕様のほうが良いと思われる。(奇跡的に干渉していない)
現在、ピナレロ製のTiger AL Aeroステム用の専用スペーサーは新型と旧型で2種類存在する。
旧型:カーボン製で、複数枚重ねたたときに段差にならないようにコラムの後ろ側に突起があり、突起は金属製のインサートが入っている。
新型:軽量化のためか、全体が樹脂製になり、突起の直径が少し大きくなった。突起の凹側の穴も大きくなったので、カーボン製の細い突起の上に樹脂製のスペーサーを積むことは可能だが、逆はできない。
カーボン製(旧型)、樹脂製(新型)ともにVibeステム用スペーサーのための突起との干渉もみられないため、普通に重ねて使うことができる。
【改善案】
コラムスペーサーが乗っかる部分(コラムから外側に+3mmくらい)の領域は厚さそのままで、前側のステムと干渉する部分をもう少し薄く設計することでベタ付けできるかもしれない。
また、Vibeステム専用のスペーサーの突起なしのほうが汎用性は高くなる。そのへんの形状調整はアルミのCNCの削り出しなので要相談。